土地家屋調査士と不動産鑑定士

土地家屋調査士事務所をしていますと、よく、次のようなお問い合わせをいただきます。

相談者

所有している不動産を売りたいんですけど、価格を調べてもらうことはできますか?

土地家屋の調査をするということは、不動産の価格も調べられるだろうと思われるのも無理はないです。
残念ながら、土地家屋調査士は、不動産の価格を調べることはできません。
不動産の価格(経済価値)を判定・評価するのは、不動産鑑定士の仕事になります。
それぞれ超簡単に言うと、

不動産鑑定士は「不動産の価値を調べる人」
土地家屋調査士は「不動産の物理的な構造や利用状況を調べて登記する人」

となります。
今日は、土地家屋調査士と不動産鑑定士の業務の違いについて、説明したいと思います。

それぞれの資格の定義

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士について、ウィキペディアには次のように説明があります。

不動産鑑定士(ふどうさんかんていし)は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき制定された国家資格であり、不動産経済価値に関する高度専門家である。不動産の鑑定評価はもとより、それを基礎とし、土地の有効利用なども考慮したコンサルティング業務等も行う。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

不動産鑑定士は全国にわずか約8,000人しかいない、非常に希少価値のある資格です。
独立開業はもちろん、企業内鑑定士として専門性を発揮している人も多くおられます。
社会の好不況に左右されず、全国規模で活躍できる点が魅力のようです。



土地家屋調査士とは

これに対し、土地家屋調査士は次の通りです。

土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)とは、不動産の表示に関する登記の専門家のことであり、他人の依頼を受けて、土地建物の所在・形状・利用状況などを調査して、図面の作成や不動産の表示に関する登記の申請手続などを行う。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

土地家屋調査士は全国に約16,000人で、不動産鑑定士の約2倍となりますが、それでも他士業に比べると少ない方です。

行政書士

ちなみに行政書士は全国に約50,000人の会員がいます。

土地家屋調査士の多くは、独立開業して自分の事務所を開設するか、あるいは先代の開設した事務所を継いでいる人が多いようです。



不動産鑑定士の具体的な業務

不動産鑑定士の具体的な業務について説明いたします。
土地家屋調査士の主な業務については、こちらを参照ください。

①鑑定評価業務

不動産の経済価値を判定し、その結果を価額として表示することをいい、不動産鑑定士の独占業務となります。
鑑定評価業務は「公的評価」「民間評価」に分けられます。

公的評価

公的機関から依頼される業務のことです。

  • 地価公示
  • 相続税路線価
  • 裁判所の競売に関わるもの
  • 公共用地の取得 など
土地家屋調査士

公共的な業務が安定的にあるので、安定した収入が得られる資格のようです。
公共からの仕事は、土地家屋調査士にもあります(公益社団法人京都公共嘱託登記土地家屋調査士協会)。

民間評価

民間企業や個人等から依頼される業務のことです。

  • 不動産売買・担保・賃貸
  • 不動産を相続するとき
  • M&A(企業買収)に関わるもの
  • 不動産を証券化する際の資産価値 など

②コンサルティング業務

不動産の鑑定評価に基づき、顧客のニーズに合わせたアドバイスと提案を行います。

  • 不動産の有効利用の提案
  • マンションの建て替えの際のコンサルティング
  • 市街地再開発事業等に係る不動産の権利調整
  • CRE戦略(企業が所有している不動産の有効活用の提案)
  • プロパティマネジメント(不動産に関する資産の管理業務)など
土地家屋調査士

不動産鑑定士と一緒に組んで仕事をすることは、ほとんどありません。
不動産鑑定士は調査士が登記した情報を利用して鑑定する、という程度の間接的な関係です。



どんなときに誰に依頼をすればいいか?

不動産鑑定士と土地家屋調査士の業務の違いを上げましたが、では、さらに具体的に、どのような場面でそれぞれの資格者が登場するのかについて説明したいと思います。

不動産鑑定士に依頼する場面

不動産鑑定士に依頼する場面には、例えば次のようなものがあります。

  • 相続税を軽減するために税務署に提出する証拠資料が必要なとき
  • 法人とその役員の間で不動産を売買するとき
  • 賃料改定のために裁判に使う資料が必要なとき
  • 相続財産の分け方についてトラブルになったとき
  • 銀行から借り入れするために不動産の担保価値を示す必要があるとき

不動産鑑定による評価は公的な効力を持つため、証拠書類となります。

Point

不動産会社等が不動産の価格を示すことがありますが、これは「売れそうな価格」を不動産会社が独自に算出したり、不動産鑑定士に依頼して算出したものです。そのため、依頼先によって金額に多少の違いが出ることがあります。

土地家屋調査士に依頼する場面

土地家屋調査士に依頼する場面には、例えば次のようなものがあります。

  • 土地を売買する際、境界がわからないとき
  • 建物を新築、増築したときに登記が必要だと言われたとき
  • 一つの土地を複数に分けたいとき
  • 融資を受ける際、土地の地目や面積を正確に直すよう言われたとき
  • 解体して既にない建物の登記が残っていると言われたとき

上記はあくまで一例です。

Point

土地の境界、建物の新築・増築など、不動産の物理的な状況に変更が生じたときに、土地家屋調査士が登場します。
「物理的な」とは、例えば、「土地の境界=測量座標で示す位置」、「建物=床面積・階数・屋根の種類・木造か鉄骨造か等」というような現実世界で目に見えるものを示しています。
これに対し、同じ登記をする司法書士を例にすると、抵当権とか所有権とか、目には見えない「権利」を登記するという仕事になります。

まとめ

不動産鑑定士は「不動産の価値を調べる人」
土地家屋調査士は「不動産の物理的な構造や利用状況を調べて登記する人」

間違えやすいこの二つの士業について、概要はつかめましたでしょうか。
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